プトレマイオスエンジンの概要
プトレマイオスエンジンは、NORNSS2 において、プトレマイオス系の天文計算を史料に基づいて再現・検証するための計算エンジンである。現在は、その第一段階として、太陽の位置計算を対象にしている。
このエンジンの目的は、単に現代的な数式で太陽黄経を計算することではない。重要なのは、当時の天文表や計算手順をもとに、どの史料を使い、どの表を参照し、どの値から計算したのかを追跡できる形で再現することである。そのため、計算処理を先に作るのではなく、まず史料ソースと表の固定を優先している。
現在の主な史料ソースには、NORNSS2 内部にある Parisian/Vimond 系の read-only proxy を使う方針である。具体的には、data/alfonsine/parisian_1320_vimond 配下の太陽関連表を、読み取り専用の固定ソースとして扱う。このソースは、16世紀に実用されたプトレマイオス系計算を再構成するための主要ルートとして位置づけている。
太陽計算で主に参照する表は、太陽の平均運動、太陽の平均引数、太陽の補正表、日数表、度数・黄道十二宮に関わる補助表である。これらの表を使って、基準日からの経過日数、平均位置、補正値、最終的な太陽位置へ進む構造を想定している。
固定ソースは、現時点では計算に使用していない。まず、存在確認、形状確認、内容署名による固定を行い、「今後 Reader が読むべき表値キャリア」として固定している段階である。つまり、表の値そのものをまだ天文値として解釈しておらず、sexagesimal 値の読み取り、表引き、補正値の適用、太陽黄経の計算には進んでいない。
補助的な史料・比較対象としては、純粋なプトレマイオス系に近い経路として Ptolemy Handy Tables を予備候補に置き、計算文化の文脈確認として Peurbach の Theoricae novae や Peurbach/Regiomontanus 系の Epitome を参照候補とする。また、比較用には Regiomontanus Ephemerides 系を置く。ただし、これらは現時点では本計算の入力ソースとしては固定しておらず、主系統は Parisian/Vimond 系 read-only proxy である。
アルフォンソエンジンとの違いは、目的と立ち位置にある。アルフォンソエンジンは、NORNSS2 の既存本線に近い位置にあり、Parisian/Vimond 系の表をもとに、アルフォンソ天文表系の計算を安定して扱うことを目的としている。これに対して、プトレマイオスエンジンは、同じ史料ソースを参照する場合があっても、それをアルフォンソ計算として使うのではなく、16世紀におけるプトレマイオス系の実用的な計算手順を再構成するために使う。
つまり、両者は同じ資料群に触れる可能性があるが、読み方が異なる。アルフォンソエンジンは、アルフォンソ表そのものの計算体系を扱う。一方、プトレマイオスエンジンは、後世のプトレマイオス的理解、実用計算、天文表利用の文脈を意識しながら、太陽位置などを再現するための別系統のエンジンである。
この違いは重要である。プトレマイオスエンジンが Parisian/Vimond 系の表を使うとしても、それはアルフォンソエンジンをそのまま流用するという意味ではない。むしろ、史料上利用可能な表を読み取り専用で参照し、それをプトレマイオス系計算のためにどのように扱えるかを、別の契約と別の境界で検証するものである。
プトレマイオスエンジンの長所は、史料と計算過程の関係を細かく追跡できる点にある。どの表を使ったのか、どのファイル内容を根拠にしたのか、Reader がどこから値を読むのかを段階的に固定するため、後から検証しやすい。また、アルフォンソ本線に直接つながないため、既存エンジンを汚さずに、別系統の計算仮説を安全に検討できる。
もう一つの長所は、16世紀的な実用計算に近づける余地があることである。純粋な古代プトレマイオス理論だけでなく、後世の天文表利用や教科書的理解を含めて、実際にどのように太陽位置を求めていたのかを検討できる。これは、歴史的な占星術・天文学・暦算の再現にとって重要である。
一方で、短所もある。第一に、アルフォンソエンジンよりも手順が複雑になりやすい。史料ソース、表値キャリア、Reader、lookup、計算処理を分けて扱うため、すぐに計算結果を出すことはできない。第二に、Parisian/Vimond 系の表を使う場合、それがどこまでプトレマイオス系計算として妥当なのかを慎重に説明する必要がある。単に表が使えるから使う、という形ではなく、なぜその表をプトレマイオスエンジンの史料ソースとして扱うのかを明確にしなければならない。
また、プトレマイオスエンジンは、現時点ではまだ初期段階である。表の値を実際に抽出しておらず、補正値も適用していない。太陽黄経の計算結果もまだ出していない。そのため、現段階での強みは「計算できること」ではなく、「計算に入る前の根拠を安全に固定できていること」である。
このエンジンでは、史料ソース、表値、Reader、lookup、計算処理を段階的に分けて扱う。史料ファイルは読み取り専用とし、data/alfonsine や既存の本線エンジンは変更しない。また、Reader を作る前に、どの表を読むのか、どのファイル内容を固定値の根拠とするのかを先に確定する。これにより、あとから計算結果を検証でき、史料の取り扱いと計算処理が混ざることを防ぐ。
現在の到達点では、使用する史料ソース、太陽計算に必要な表の種類、実在するファイルの候補、表値キャリアの内容署名、Reader の契約形までが固定されている。次の段階では、固定済みの表値キャリアを対象に、読み取り専用の Reader を作る前の最終確認を行い、その後、ごく限定された no-lookup Reader の設計へ進むことになる。
プトレマイオスエンジンは、最終的には、史料に基づく太陽位置計算を、再現可能で検証可能な形にすることを目指している。ただし現段階では、計算結果を出すことよりも、史料ソースと表値の根拠を確実に固定することを優先している。
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